我疑わしい『方法序説』

生まれて初めての書評としてこの本について述べたい。
ちなみに僕はこの本を2016年ベストに選出している。

はじめて読んだのは行きの通勤電車の中だった。
乗車時間は片道40分ほどで、僕の主な読書時間となるお楽しみのB&T(Book and Train)だ。
僕はこの往復時間のために仕事をしている。

そんな通勤の電車で読んだ方法序説は、会社最寄りの駅に到着する頃、僕の心を激しく震わせていた。
新入社した社員にオリエンテーション資料として同書を渡すほど震えたのだ。

デカルト批判をわざわざ本で出すような人物もいるようだが、デカルト哲学はおかしいだなんだという話はどうでもよく、賞賛されるべきはデカルトの哲学に対する哲学である。
つまり哲するための姿勢だ。

デカルトは”コギト・エルゴ・スム”にいたるまで、自身がどのような場所で何をどのように考えたのかを細部に渡り描写する。
おおよそ5年まえのソーシャルゲームチュートリアルほどに長い。ただ、丁寧で洗練されており、読んでいて非常に心地よいという点でソーシャルゲームとはかけ離れている。

それは、子供の頃の思索の度がすぎるモーガン・フリーマンを彷彿させ、あるいは懐疑を擬人化したといって過言でない僕の唯一の友人の形質を彷彿させる。

あなたはきっと僕の友人を知らないだろうから必然的におすすめの読み方はモーガン・フリーマンになる。
モーガン・フリーマン 時空を超えて」を3度ほど見た上で、モーガン・フリーマンの声を想像しながら読んでみて欲しい。

モーガン・フリーマンの声で読み、本を閉じ、思いを巡らせる。
この強烈な知的体験を強く推奨したい。

方法序説 (岩波文庫)

方法序説 (岩波文庫)