知の果てへの旅
僕には友達がおらず、ただひとり親友がいる。
インターネットで知り合うことについて、出会うという表現ができるとすると、彼とは二十年前くらいにインターネットに明け暮れていたときに出会った。
10年ほどはインターネットでは毎日のように会っていた。実際に会った回数は両手の指の本数に両足の指の本数をかけたくらいだろう。
量的にはそのようだが、質的には奇妙であることが伝わるだろうか。
今は宇宙の謎を解くべく夜な夜なLINEで世界の不可知について語り合っているのだ。
アートネイチャーだかアデランスのCMについて語っていた頃を思い返すと、どうです?えらく進歩したもんでしょう。
そんな夜の会議にうってつけの本が出版された。
テーマは不可知についてだ。
不可知な事柄については、現代はもちろん、古代から語り継がれている永遠のテーマだ。
過去に不可知とされた事柄も、人類の視界はずいぶん広がり解像度も上がった。
我々は今、何がわからなくて、何がわかるんだろうか。
無能なホモ・サピエンスで、学術的な専門家ではない我々にわかりやすく最先端科学(人文科学も含みたい)の見地から不可知の瀬戸際に猛進する。
というと、勢いがある感じだけども、シンプルにしすぎて感じがちがうんですよね。
著者の内面的な興奮なんかは感じ取れるんだけど、淡々と語っていく感じなんですよね。
知的な営みが心底好きです的なイメージをうけます。そういう人の本がひどく好きです。
細かいところで言うと、カオス、フラクタルから始まり、量子論、素粒子論、相対論や意識のハードプロブレムまで取り扱われる。
詳しいことは他のサイトの書評なりを読んで欲しい。
文章は平易だし万人におすすめしたいのだけれど、おそらく事前知識がまったくないと理解が及ばない部分もあると思われる。なので、この本を楽しく読むための本をいくつかあげておこう。
ちなみに読み終わっていないので、足りない部分はあるだろうし、機会があれば後で追加する。
最後の方でゲーデルがでてくるらしいんですよ。楽しみだなあ。
■相互作用
この手の本を読むまでは僕自身自覚的でなかったんだけれども、世界は相互作用で満たされているということは大前提であるという風潮がある。
大抵の本には世界は相互作用なんだなーと考えさせる記述があるが、この本は明確に書かれていないと思う。でも前提としてあるんじゃないかなあ。
■宇宙
ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで (ハヤカワ文庫NF)
- 作者: スティーヴン・W.ホーキング,Stephen W. Hawking,林一
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1995/04/01
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 24回
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故スティーブン・ホーキングの有名な本。
本中にも登場するし、ホーキングがどんな人間で、宇宙がどんなことになっているのか、そんな事を知ることができる。
■量子論
量子論はなぜわかりにくいのか 「粒子と波動の二重性」の謎を解く (知の扉)
- 作者: 吉田伸夫
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2017/04/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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量子論は分かりにくく、学んだところでわかるような代物でないということはファインマンの言葉で理解したが、知ろうとする行為自体に意味がある(意訳です)とバートランド・ラッセルは言っていた。
何が量子論をわかりにくくしているのか、それがわかる。
ペンローズのねじれた四次元〈増補新版〉 時空はいかにして生まれたのか (ブルーバックス)
- 作者: 竹内薫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/12/14
- メディア: 新書
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量子論と並んで、感覚的でない物理理論だ。量子論は観測できないほどミクロの世界なのでファンタジーとして扱える。ただ、相対論は体験できる事柄にたいする理論なのにまったく感覚的でない。いったいどうなってんだ。
■脳
- 作者: デカルト,Ren´e Descartes,谷川多佳子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1997/07/16
- メディア: 文庫
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脳は直接関係しないです。デカルトさんが好きです。
fMRIでの意識の問題へのアプローチってかなりうさんさいと思ってたんだけども、脳周辺のことはある程度わかるような気がする。fMRIについての本ではないよ。
■出てくる人たち
- 作者: スティーヴンワインバーグ,大栗博司,Steven Weinberg,赤根洋子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/05/14
- メディア: 単行本
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最新科学を扱うものの、あたりまえのようにギリシャの哲学者と天文系の学者はでてくるので、一冊くらい読んでおくと雰囲気がつかめると思う。
西洋哲学史 1―古代より現代に至る政治的・社会的諸条件との関連における哲学史 (1)
- 作者: バートランド・ラッセル,市井三郎
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 1970/03/30
- メディア: 単行本
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自然科学の人でも、特に数学系の人たちは哲学が好きだよねえと思う。
取り扱っているテーマは哲学的課題を多分に含むので読むといい。ヤフオクとかで買える。
■錯覚など
行動経済学的な話はでてくるし、人類はこの本を読むべきだとおもう。
■番外
ほぼ同テーマで、こちらは可知の地平線について。
まあそんな感じっすかね。
追記 2018.6.22
読み終わったんだけれども、読むための本を追加しておきます。
■ゲーデル
ゲーデルについてわかりやすくわかる本。
「知の果て」本自体によく論理学的な言い回しがでてくるので、読んでおくと理解しやすいのかなと思う。
■知の果て同テーマ本
目線が違うので、読むとより本書の立ち位置がわかるかもしれない。
世界はなぜ「ある」のか?:「究極のなぜ?」を追う哲学の旅 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: ジム・ホルト,寺町朋子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/11/22
- メディア: 文庫
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そして感想追記。
後半は特に著者の熱気が伝わってきていて、読んでいる僕も知的高揚感が増した。
こういう経験ができる本に出会う機会は少ないのだけれど、こういう体験があるということも読書の特徴と言える。